桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
「何って…、ごはんを…。約束したじゃないですか。夕飯作りますねって」
「あー、そんなのいいからいいから。お前の言った通りすげぇ綺麗に見えんじゃん。一緒に見ようぜ?」
「え…で、でも…」
宇髄さんの申し出も自分が宣言したことをちゃんと全うしたくて迷っていると、ズカズカとこちらに歩み寄って来た彼に腕を掴まれた。
「飯より一緒に花火見ようって言う約束だろ?つまみと酒は買って来たからよ。一緒に飲もうぜ?」
そう言って掲げるのはコンビニの袋いっぱいに入っている缶やおつまみの小袋。
ニカッと笑う彼の笑顔に釣られるようにして目尻が下がるとコクンと頷いてみせる。
「甘いお酒ありますか?苦いのは飲めません。」
「おー、あるある。お前の好みわかんねーからよ。ありったけの種類買って来たぜ。」
「そんなに飲めますか?私、たくさんは飲めませんからね。」
お世辞にもお酒が強いとは言えない私はコンビニの持ち手が千切れそうなほど重量感のあるそれに若干顔を引き攣らせた。
「飲めなかったら置いていくわ。そしたらよ、また来て良いか?そんときに飯も作ってくれよ。リベンジリベンジ〜」
「あはは!分かりました。じゃあ、飲めるだけ飲んだら冷蔵庫入れておいてください。」
さりげなく次があることを示唆する内容に胸がドキドキと高鳴った。
手を引かれてベランダに出ると夜空に大輪の花達がけたたましい音を立てて咲いていく。
このマンションに住んだのは偶然のこと。
たまたまこんな副産物があっただけ。
今までは花火大会に揉みくちゃになりながら行く必要がなくてラッキーくらいにしか思っていなかったけど、今日ほど此処の物件を選んだ過去の自分を褒めてあげたい日はないと思う。
「マジで此処の部屋めちゃくちゃ良いじゃん。」
「ふふ。気に入りました?」
「おー。俺の部屋よりよっぽどいいわ。」