桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
「…悪ぃけど、他当たってくんねぇ?コイツ、俺のだから。」
ふわりと香るその香水が誰のものかは一目瞭然。
私はこの香りで彼に気付くほど鼻に擦り込まれているのだから。
しかし、二人の男性は突然来た大きな男性の出現に顔を引き攣らせたのは言うまでもない。
背中に感じるのは彼の胸。宇髄さんに片手で抱き止められていると分かると途端に心臓が煩く拍動し出す。
「あ…、な、なんだ!彼氏待ってたんだ?ごめんねぇ〜!じゃ、た、楽しんで!」
そそくさと逃げていく後ろ姿を見送るが、その二人が見えなくなっても何も発しない宇髄さんに私はどうしようかと頭を悩ます。
何も言ってくれないのに腕は体に巻きついたままだし、流石に素面でこの状況は恥ずかしい。
意を決して体勢を整えて彼を見上げた。
「あの…ありがとうございました。」
ちゃんとお礼を言ったのに振り返った私に返ってきたのはデコピンだった。
──ツンッと額を突っつかれると不満げな彼の顔が目に入る。
「お前な、15分も探したんだぞ!それよりあーゆー時は嘘でもいいから"彼氏を待ってる"って言えっつーの。」
15分待っていた私と15分探してくれていた宇髄さん。ちゃんと来てくれたことに嬉しくて怒られているのに口角が上がってしまう。
「私だって15分待ってましたー。でも、会えて良かったです。あの人たちあしらったら帰ろうかと思ってましたよ。」
「はぁ?帰んなっつーの!楽しみにしてたっつーのによ。」
口を尖らせる宇髄さんに益々笑みがこぼれ落ちる。帰らなくて良かったと顔がにやけるのを止めることはできない。
「おい、それより分かったのか?」
「…え?何がですか?」
「だーかーら!!あーゆー時は"彼氏を待ってる"って言え!可愛い顔してるっつってろーが!」
「あー!そのことですね!分かりました!次からそうします。頭が回りませんでした。」