桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
──な、何されても、いいから…今日の夜、来ませんか…?!花火、一緒に…見ません、か?
そう言ってしまったのは朝の電車の時のこと。
知り合ってからそう月日が経っているわけでもないのにそんなことを言ってしまったのは私が少なからず彼に好意を抱いているから。
熱中症になりかけていた私に気付いて介抱してくれた宇髄さんは同じ駅を使う電車通勤組。
一度知り合ってしまえば、見かけたら声を掛け合う仲になっていた。
そして今日もそれだけの筈だった。
もらったバナナが傷みかけていたからパウンドケーキにしたのは昨夜。
「会えないかな〜」なんて…。もらってくれるかも分からないそれを持って最寄駅でキョロキョロして見れば、見慣れた大きな体の宇髄さんが目に入った。
パウンドケーキは直ぐにもらってくれたのは良いが、今日の夜が花火大会ということを伝えると途端に眉間に皺を寄せた彼に理由を聞いてみる。
すると、家の近くが花火大会の会場らしくて帰宅時間に重なることを憂いていたのだ。
それが分かってしまうと私は何の迷いもなく、家に来ないかと誘ってしまったのだ。
言ってしまったらもう時すでに遅し。
面食らっている様子の宇髄さんに「今さら冗談です」なんて言えないし、言いたくない。
咄嗟に出てしまった言葉だけど、私の本音だった。前に助けてもらった御礼も兼ねて…とは思ったけど、家に誘うことに少しの下心がなかったかと言えば嘘になる。
だって私は宇髄さんに好意を抱いていたから。
そんな私の気持ちなど知りもしないと思うが、「女として見てる」なんて言われてしまったらこのまま突き進むしかなかった。