桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
正直、そこまで言うつもりもなかったので完全に俺のうっかりミスだ。
でも、自分のことを女として見てないだろ?と言われたことが悔しくてそれだけを否定したかった。
しかし、これでコイツの家に行くことはなくなったも同然。ガックリと肩を落として電車が入ってくる音を聴き、慌ててパウンドケーキを口に全て放り込んだ。
バナナの優しい甘みくらいで甘すぎないそれは俺好み。せっかくゆっくり育ててきたこの想いだけど、俺の見切り発車でおじゃんだと思うと後悔しかない。
「ご馳走さん。美味かった。ありがとな。」
二の句も告げずに顔を真っ赤にして固まっている彼女に礼を伝えるとホームにはガタンゴトン…と電車が入ってきてブレーキの音が響き渡る。
それを見ると電車に入るためにドアの前に並び始める人たちに倣い自分もいつものように歩みを進めた。
その時、グイッと腕を引っ張られてその場に留められる。引っ張られた相手が誰かなんて見なくても分かるが、初めて彼女に触れられたことに柄にもなく心臓が高鳴った。
「…?どうした?」
「…な、何されても、いいから…今日の夜、来ませんか…?!花火、一緒に…見ません、か?」
顔は真っ赤で、目は涙目。
そんな姿を見て男ならば据え膳食わぬは何とやらだ。此処が外でよかった。
あまりに真剣にそう言って震えている彼女を見ればもう答えは決まっている。いや、その前から心は決まっていた。
「…18時半には此処に着けると思うからよ。ビールでも買ってくるかな〜。」
「え…、き、きてくれるんですか?」
「おー。ビールとつまみ買って行くわ。花火大会終わるまで避難させてくれるか?」
「は、はい!ごはん、私が作るので良かったら…!」
「お、悪ぃな。楽しみにしてる。」
掴まれた腕をゆっくり離すとその手を握って、着いたばかりの電車に乗り込んだ。
繋がれた手はどちらも離すことはなく、結局俺の最寄り駅までその手は繋がれたまま。
名残惜しく離した手を振ると、顔がにやけてしまい離したばかりの手で口元を覆った。
会社に着いた俺が善逸に再び「何かニヤけてる!!」と再び揶揄されたのは言うまでもない。