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桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】

第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19





「あれ?宇髄さん?」

「え?」


顔を上げた瞬間、目が合ったのは朝よく会う日傘の女。仕事帰りに会うなんて初めてのこと。
朝も会ったが一日に二度会えるのは少なからず嬉しかった。
隣に座っていいか?と尋ねられたので、頷けば直ぐに隣の座席が沈み込んだ。


「ため息なんて吐いてどうしたんですか?」

「あー……いや、コレ。」


確かに朝によく会う男が帰りの電車で盛大にため息を吐いていたら疑問に思うだろう。
持っていた紙袋に入ったバナナを見せるとキョトンと首を傾げている。


「バナナ?え、バナナがどうかしたんです?」

「後輩に詫びとか言ってもらったんだけどよ。そう好きでもねぇし、寄越してきた理由が俺がゴリラみてぇにデケェから好きだろ?っつーんだわ。派手に腹立ったわけよ。」

「ゴ…ゴリラ…」


しかし、明らかにその理由を聞いて「ブフッ」と吹き出したその女を横目で見遣る。
いや、聞こえたぞ。お前今笑ったよな?
可愛い顔を少しだけ歪ませて肩を震わせるその様にジト目で見てやると手を合わせて詫びてくる。


「や、あっははは!宇髄さんみたいなイケメンにゴリラなんて言える後輩さん面白い…!」

「わーらーうーなーー!!お前、笑ったんだからこのバナナ全部持ってけよな。罰として全部食え。」

「えー?むしろ良いんですか?嬉しいです!」


罰として…と言ったのに渡した紙袋を嬉しそうに受け取る姿を見ると善逸の詫びの品が喜ばれてしまって内心複雑だった。


最寄駅で共に降りれば、なかなかの重さの紙袋を再び奪い取ると途中まで運んでやることにした。
帰りながら腹が減ったと言い、ソイツが紙袋からバナナを一本取り出して食べ始めたので、匂いに釣られて自分も一本一緒に食べる。


大して好きでもないバナナがいつもより美味しく感じたなんてまだ言えない俺だけの秘密。






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