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桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】

第18章 武器は君そのもの【トラファルガー・ロー】




目に入った扉は数メートルの距離。
座ったまま這うように移動していくともう少しと言うところでその扉が開いたので体を硬くした。


その扉から出てきたのは一人の青年だった。こちらを見て「ああ、目が覚めたんだね?」と言う彼もまた白いタキシードを身につけていて物凄く嫌な予感がした。

這いつくばっている私を抱き上げるとにこりと笑ったその人の胡散臭さに顔を顰める。


「漸く君を見つけたよ。」

「…み、見つけた?」

「5年ほど前に怪我をして僕を手当してくれたのを覚えていないかい?先日島を訪れたら君はいなくて愕然としたよ。」


正直なところ、全く覚えていない。患者さんは毎日ひっきりなしに来ていたし、何百人という患者さんの手当てをしてきたから彼の顔を見てもピンとこなかった。
そんな私の微妙な反応をものともせずに彼はそのまま話し続ける。


「それなのについ最近、ハートの海賊団の手配書に君が写っているのに気づいてね。だから…僕が救ってあげる。結婚しよう。僕の花嫁として一生匿ってあげよう。」

「な、え?!そ、そんな、困ります!」

「何故困るんだい?君を助けてあげるし、戦えない君がいてもハートの海賊団にとって不利益でしかないだろう?君を守るためにクルーが死んでもいいのかい?」

「…え、…?」



それは分かっていたことだった。
戦わなくて良いというローさんの優しさに甘えて私はこの船に乗せてもらっている。私の武器は看護の知識だけ。

いつか私を守ろうとして誰かが怪我をしたり……し、死んだりするんじゃないかと考えないわけではなかった。
図星を突かれたことで私は何も言い返せなくなり、大人しく彼の腕に抱かれている。



「…それ、は…」

「僕が今すぐ海軍に通報しても良いんだよ?そうしたら彼らはすぐに捕まってしまうだろう。」

「なっ、や、やめて!やめて、ください!」

「だったら僕の花嫁になってくれるかい?そうすれば彼らは見逃そう。約束する。」



そんなのは嫌だ。私はあそこにいたい。何もできないけど、ローさんのそばにいたい。でも、私の武器はただの看護の知識だけ。
此処で彼の花嫁になれば、初めて彼らを守れるのだ。



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