桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第18章 武器は君そのもの【トラファルガー・ロー】
「…だけどなぁ…、どうせ私のことなんてクルーのうちの一人だよなぁ…。」
ローさんは優しくしてくれるけど、それは私が非戦闘員で戦えないからだ。
みんなみたいに戦えればもっと対等に見てもらえるんだろうけど、私の武器は看護の知識くらいで正直、医者でもある彼に太刀打ちもできない。
クルーが怪我をした時くらいしか役に立てない自分を歯痒く思っていたけど、ローさんは「お前は戦わなくていい。」と言ってくれて甘えてしまっている現状だ。
酒場の壁に寄りかかりながら地面を向いていると、突然影が出来たことでローさんかと思って笑顔で顔を上げた。
しかし、そこにいたのは彼ではなく、知らない男性達数名。
後退りをしようにも後ろにも人がいたことでそれは叶わず、私は口を塞がれたかと思うと何かの薬を嗅がされたようでそのまま意識を失ってしまった。
*
目が覚めたのは美しい部屋だった。
彫刻やら絵画やらが並べられていて、天蓋付きの大きなクイーンサイズのベッドに寝ていた私は目をパチクリさせて状況把握を強いられる。
こう言う展開では暗い倉庫の中で痛めつけられるのが一般的だと思っていた私は肩透かしを喰らい、小首を傾げた。
しかも、体を起こしたと同時に体に感じた違和感に自分の姿を確認すると「ええ?!」と思わず声が出た。
何故ならば私が身につけていたのは純白のドレスだったから。
(…え、ろ、ローさんのサプライズ?そんな…!お付き合いもしないで突然結婚だなんて…!…んなわけないか。)
頭の中で妄想を繰り広げる元気はあるが、状況はよくわからない。
あたりを見回してみても此処が立派なお屋敷であることだけは分かる。
拘束もされていないので、ベッドから降り立つが足に力が入らなくてその場に倒れ込んでしまう。
「…っ、薬のせいか…」
ローさんなら私に薬を飲ませたり絶対しない。
彼は医者だ。仮にも仲間の私に医学を盾にして懐柔しようだなんてしないだろう。