桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第17章 サヨナラ幼馴染【宇髄天元】
ほんの冗談のつもりだった。
答えは分かりきっていたけど、「何言ってんだよ」と軽く言われるくらいだと思っていた。
しかし…
「幼馴染なんて御免だわ。」
そうはっきりと断られたのだ。あまりに突然のことでキョトンと目を見開いた。
好きなのは私だけだって分かってた。
でも、ほんの少し期待もあった。
頻繁に顔を見せていたら好きになってくれるかな?
露出度多めの服を着たら意識してくれるかな?
そんな淡い期待を胸に彼の部屋に通っていたと言うのにあまりの呆気ない終わり方に心臓を一発で貫かれたようだった。
要するに見込みはないと言うこと。
私はおばさんが持ってきてくれたお茶が乗ったトレイを手にベッドから立ち上がる。
「…そ。じゃ、帰るわ。」
「はぁ?もう帰んの。何で。」
「来んなって言ったじゃない。」
「言ってねぇよ!来るなら連絡よこせって言っただけだろ?」
「はいはい。もう二度とこないわ、バーカ。」
「はぁ?ちょ、ちょっと待てって!」
天元が引き止める声が聴こえてきたけど、リビングにいるおばさんに「ご馳走様でした」とトレイを渡すと全力疾走で自分の家に帰った。
…とは言え隣だけど。
その日、私は失恋した。
翌日から私は天元の家に行くのをやめた。
二日に一回は行っていたと言うのに、フラれてしまえば暫く会いたくないと思うのは当然だと思う。
あちらはフッた側だから大したことないかもしれないが、こちとら小っ恥ずかしくて会いたくない。
できれば忘れて欲しい。
だけど、家が隣同士の幼馴染だ。いずれ会うことにはなる。幼馴染だからこそ時間が解決してくれると思っていた。
だからこの二週間、天元に会えなくて寂しいと思いつつ、とにかく心の傷を癒すことに全力を費やしていた。
会わなければ考えずに済む。そう思っていたのに、夜な夜な人知れず涙を流すこともあるにはある。
だって20年間近くずっと片想いしてきたのだ。それくらい引き摺ってもバチは当たらないと思う。