第1章 憎い敵・・・でも、好き【赤頭巾】
sideエレン
「・・・んっ・・・。」
視界がぼやける中、目が覚める
そして、やっと自我を取り戻せた事を知る。
しかし、いつまた“あの自分”にもどるかわからない・・・。
取り敢えず、状況把握をしようと立ち上がろうとすると・・・
「よぉ、久しぶりだな。」
急に窓が開き、カーテンが風によって舞う中、前に森で会ったあの人が下の窓枠に足を上の窓枠に手をかけまるで迎えに来てくれたような姿でそこにいた。綺麗な月の光が窓から差し込んでおりさらに幻想的だ。
そんな姿はどこかのおとぎ話で城に閉じ込められたお姫様を迎えに来た勇者のようにもみえる。俺はお姫様でもなんでもないけど、彼は何故かこの状況を変えてくれる勇者のように見えた。
「なんで、ここに・・・?」
前に森で会っただけの彼がなぜここにいるのかが疑問でしかなかった。
しかも、またこんな人が近寄りもしない小屋に・・・
「お前がここにいるって分かったら気になってな。前に森で会った時にも気になっていたが・・・、って、何だその格好は?」
彼は窓から部屋に入ってき、俺の前に向かいあうように座る。その時に爪や牙を見たのであろう。だからあんな質問をしたのだ、普通の人ならこんな格好になる筈がない。
「・・・これは・・・。」
爪を隠しながら喋ろうとして思わず口を閉じる。彼にこんなことを話していいのだろうか?名前も知らない、何者かも知らない・・・そんな彼に。この事は一部の人間しか知らないし、あかしてこなかった
でも・・・
「・・・実は・・・」
それでも、俺は彼に話そうと思った。
彼になら言ってもいいと思えたから。
何故かは自分でもわからない。
でも、この人は信用できると思った・・・。
そして、覚悟を決め喋ろうとした時・・・
「・・・っ・・・!」
急に頭に激痛が走る
思わず頭を抱えしゃがみ込んだ
「おい、どうした!?」
見た目は冷静沈着そうだった彼が心配して俺に寄ってきてくれる。
こんな顔もできるんだ、会って間もないのにこんなに心配してくれる・・・こんな優しい彼に迷惑はかけられない・・・
「・・・に、・・・げ、て・・・」
激痛が走る中、必死に声をしぼりだす
彼に伝わったかな・・・?
彼が俺のことを心配して焦りながらも俺の顔を見つめそして、手を握り声をかけてくれている中、俺はまたも意識を手放した。