第2章 シナリオ通りじゃない/観月はじめ
私は伸ばした手を引っ込めて平謝りをした。
「では、いきましょうか。それじゃあ、柳澤また明日です。」
はじめは、柳澤くんを一目見てまた前に向き直して歩みを進めた。
その後ろを私はパタパタと着いて歩いた。
「はじめ!もっとゆっくり歩いて!」
「さっきから、周りの視線が痛いんですよ。僕は女性と一緒にいることなんてほとんどないので、皆物珍しいんでしょう。」
「そっか…」
はじめは女の子とこうして歩くことないんだ。
それだけで私だけ特別みたいで自然と笑みがこぼれる。
「はじめ?久しぶりにはじめの入れた紅茶飲みたいな。帰る前に少し中庭に行かない?」
はじめはあまり乗り気ではなかったけど、渋々了承してくれた。
「はじめはさ、どういう女の人が好きなの?」
中庭に着いてから、紅茶を飲みながら私は質問を投げかけた。
「うーん。そうですねぇ。黒髪のさらさらなストレートヘアで、化粧もしてるかしてないかの古風な女性が好きですよ。」
私と真逆だ。もしかして牽制する為にわざと私と真逆の特徴言ってる?
よーしこうなったら。
☆☆☆
はじめと一緒に帰ったのは金曜日。土日を挟んで、月曜日の朝。
私が教室に入ると、教室中がどよめいた。
クラスのみんなの視線は私に向いていた。
1人の女の子が私に声をかける。
『ちゃん?だよね?すごく印象変わったね!かわいい!』
私は派手な金髪パーマを黒髪ストレートに変えて、つけまつげやグロスといったギャルメイクを止めてナチュラルメイクにした。
制服も校則の規定通りにピシッと着た。
そして、休み時間。はじめのいる3年棟に足を運んだ。
「はじめ…。」
この姿を見られるのがなんだかこそばゆかった。
「!?」
はじめはあからさまに驚いた表情をした。
「さん、その格好は…」
「はじめの好きな女性に近づけたかな?」
はじめは小さくため息をついた。
「貴女って人は…本当にバカですね…。
好きな格好していたかったんじゃないのですか?」
「私、ギャルでいるより、もっとなりたいものができたから。」
はじめは何も言わず私の頭からつま先までを見つめる。
そんなはじめをよそ目に私は続けた。
「私、はじめの彼女になりたいの!」
しばらく沈黙が続いた。
その沈黙を破るかのようにはじめが口を開いた。