第2章 シナリオ通りじゃない/観月はじめ
「今、僕がここでそれを承諾してしまったら、貴女の見た目だけを見てるみたいじゃないですか。」
そして、少し間を開けてこう続けた。
「ちょっと待っててください。柳澤の所へ行ってきます。」
はじめは柳澤くんの元へ行き、何やら話しているようだけど何を言っているかは分からなかった。
「分かっただーね!観月もちゃんと男だーね!」
柳澤くんの嬉しそうな声だけが聞こえた。
そして、柳澤くんの態度が気に食わなかったのか不機嫌そうなはじめが戻ってきた。
「今日は部活を柳澤に任せて、僕はお休みすることにしました。放課後僕の家に来ませんか?」
「え?」
思いもよらない誘いに一瞬戸惑った。
「行く!行きたい!」
でも直ぐにそう答えた。
☆☆☆
はじめの部屋は思った通り、綺麗に片付いていて余計なものが置いていない部屋だった。
「紅茶でも飲みますか?」
「あ、、うん!頂きます!」
私ははじめの部屋で適当にくつろいだ。
「さて…。」
紅茶をテーブルに置いて、はじめは話し始めた。
「僕は、貴女の気持ちがここまで本気だと思ってなかったんですよ。でも毎日毎日、僕を追ってくれるのが嬉しくて、来てくれる度に今日も貴女に好かれてると、安心していたんです。」
「それって…?」
「でもあの時、柳澤に言われてハッとしたんです。僕は、自分が安心するために貴女を傷つけていたんですね。貴女の気持ちがいつ変わるか分からないから、僕が本気にならないうちに貴女が僕の事を諦めればいいと思っていたんです。自分が傷つかない為に、ね。」
「はじめ…?どういう意味…?」
「さん。僕は、貴女のこと好きですよ。もちろん一人の女性として。」
その言葉を聞いた時、私の瞳から一筋の涙が零れた。
涙を拭って、その顔を見られないために私は俯いた。
「たくさん待たせてしまってすみませんでした。さん、僕と付き合ってくれますか?」
「うぅ…ずるいぃ…」
顔を見なくても泣いているのが分かるくらい、私の声は震えていた。
そんな私を見て、はじめはクスッと笑った。
「さん、顔上げてください。」
私はもう一度涙を拭って顔をゆっくり上げた。
その途端、はじめの唇が私の唇に重なった。
突然のことに私は目を見開いた。
はじめの、思った以上に大きな手が私の頭の後ろを抑えた。