第19章 好きって言って/伊武深司
《深司side》
暑い。毎日毎日なんでこんなに暑いんだろ。
早く夏終わればいいのに。
まぁ、もう少しで夏休みだしいいけど。
7月も半ばになっていた。
うるさく鳴く蝉の声が余計に体の怠さを増長させる。
俺はうだる様な暑さの中、部活へと向かった。
☆☆☆
「来たか、深司。今日も暑いな。」
テニスコートに入ると部長の橘さんが既にトレーニングをしているところだった。
「ところで今日は紹介したい人がいるんだが…。神尾!お前も来てくれ。」
橘さんはそう言うと、少し離れた場所でトレーニングをしていた神尾にも声をかけた。
それを聞きつけた神尾はものすごいスピードでこちらへと走ってくる。
「どうしたんですか!橘さん!」
「実は、マネージャー希望の子が来てくれたんだ。1年の だ。」
「 です。精一杯サポートしたいと思うので、よろしくお願いします!」
橘さんに紹介されたその子は挨拶を終えると深々と頭を下げた。
「なんでわざわざ夏休み前にマネージャーなんですか?大体俺たち部員数少ないんだし、マネージャーなんて必要ないだろ。」
「深司、そこまでにしておけ。が困った顔してるぞ。」
「…すんまそん。」
見ると、本当に困ったように眉毛を八の字に下げ口元はなんとか笑おうと口角を上げていた。
「夏休みが終わると、橘部長が引退することになると思います。そうなっても、部員たちをまとめられるように頑張りたいんです!」
は再度「よろしくお願いします」と言うと深く腰を曲げた。
「まぁいいけど。よろしく。」
俺はそう言ってくるっと振り返ると、自分の練習を開始した。
「よろしくな、。」
「頑張ります!」
背中の方で、橘さんとが会話している声が聞こえる。
声の方をチラッと見ると、さっきまでの困り顔が嘘のように夏の太陽にも負けない程キラキラした顔で笑っていた。
「変なやつ…。」
☆☆☆
それからは本当に毎日頑張ってるように見えた。
「橘部長!何か私に出来ることないですか?」
「神尾先輩!タオルと飲み物どうぞ!」
積極的に動いているようだけど、ただ俺には…。