第16章 男は度胸/向日岳人
「ぷはぁ!生き返るぜ!…あれ?お前いつの間に着替えたの?」
岳人は私に目を向けるとふいにそう言った。
「さっき下で着替えてきたの。私帰ってきたらすぐ制服脱ぎたくて…」
「ふーん、なんか…いいな!」
部屋着と言っても女の子らしいモコモコした可愛らしいものではなく、白色のTシャツにショートパンツを履いただけのお世辞にも“いい”とは言えないものだと思う。
「え?これいいの?」
私は不思議そうに少し笑って聞き返した。
「制服とジャージしか見たこと無かったからな。そんなんでも、可愛い…と思っちまう…。」
言ってる内に恥ずかしくなったのか、岳人は白い肌を赤く染めながら俯いた。
突然の言葉に驚いた私は、飲もうと持っていたコップを、手を滑らせて落としてしまう。
「きゃっ!」
その勢いで、私の服にお茶が零れてしまった。
幸いコップは寸前のところで岳人がキャッチしてくれたので、割れることは無かった。
「あっぶねー…大丈夫か…?って…お前それ…!」
私を見上げたかと思ったら、照れた顔ですぐさま目を逸らす岳人。
「え…なに…?」
私は自分のTシャツに目をやると、白色のTシャツが濡れたことによってピンクの下着がはっきりと透けていた。
濡れて肌に張り付くTシャツは胸の谷間までしっかりと映し出していた。
「あ…!ご、ごめん岳人!」
「お、おう!お前に、ケガなくて良かったじゃん!」
「私…もう1回着替えてくる…ね?」
動揺した私は立ち上がる際に足がもつれて転倒しそうになった。
「ちょっ…おい!?」
転倒しかける私を受け止めようと岳人が咄嗟に手を差し出した。
しかし私の勢いに押された岳人は、私の下敷きになる形で一緒に倒れ込んでしまう。
「いっ…てぇ…」
「岳人…ごめんね!大丈夫!?」
私は馬乗りになったまま岳人の顔を見下ろした。
「っ!?だ、大丈夫だから!早くそこどけ!」
「頭打ったりしてない!?」
「ほんと…大丈夫だからっ…この状況まじやばいからっ…」
すると、私の下半身にグリっと固いものが当たったのが分かった。
「へ…?なに…?」
「あーもう!お前鈍感すぎ!そんなんじゃ襲われても文句言えねーからな!」
岳人はそう言って私の両肩を掴んで引き寄せると、逆転するように私を組み敷き、覆いかぶさった。