第16章 男は度胸/向日岳人
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その日の部活で、私と岳人は2人で侑士くんの元へ行き事の顛末を報告した。
「ほー…岳人、やるやん」
「だろだろ!?」
「まさか、岳人が告白するなんてなぁ…。」
「え!お、おう、まーな!」
侑士くんの言葉に岳人は目を泳がせながら答える。
そんな岳人を横目で見ながら私は口を開いた。
「先に言ったのは私だけど。」
「はぁ?岳人…情けないやっちゃなぁ…。好きな子に先に言わせちゃあかんやろ。」
「う、うるせぇな。元はと言えば侑士が…!」
「人のせいにするんは良くないで…?」
「と、とにかく!今日は俺が家まで送るから!邪魔すんなよ!」
侑士くんはやれやれと言わんばかりにため息をついた。
その日の練習中の岳人は、心做しかいつも以上に気合いが入ってるように見えた。
練習が終わり、1人部室の前で待っていると岳人が勢いよく飛び出して来た。
私を見つけるとすぐさま寄ってきて、まるで犬がしっぽでも振ってるかのようだった。
「よし!ちゃんと待ってたな!行こうぜぇ!」
岳人は私の肩に腕を回し、自分の方へと引き寄せながら歩き始めた。
「岳人…!歩きづらいよ!」
岳人はお構い無しに肩に腕を回すのを止めることなく、鼻歌を歌いながら歩き続けた。
半ば強引に引っ張られるように歩きながら、無事に私の家に着くと、「えーもう着いちまったのかよっ!」と口を尖らせる岳人。
「じゃあちょっと家に寄っていく?」
そんな岳人を見かねた私はそう言って、岳人に家に入るよう促した。
「ただいま〜、ってあれ?誰もいないみたい。」
玄関を開けると家の中は真っ暗だった。
とりあえず手近にあった電気のスイッチを付けると、やはり誰もいない様だった。
「まぁいっか。私の部屋、階段上がって正面だから先に行って適当に座っててくれる?」
私は岳人にそう言うと、リビングで飲み物を準備したり部屋着に着替えたりした。
準備した飲み物を手に自分の部屋に入ると、岳人はベッドに横になって携帯電話をいじっていた。
(私のベッド…。デリカシー無いにも程があるでしょ…。)
私はそんなことを思いながら手にしていたコップをテーブルに置いた。
「お、サンキュー!」
そう言うと、岳人は勢いよく飛び起きて飲み物を飲んだ。