第15章 言葉はなくとも/亜久津仁
《夢主side》
クリスマスの夜。普段飲まないお酒を飲んで上機嫌な私を、少し鬱陶しそうにしながらも仁は受け入れてくれる。
「仁〜会いたかったよぉ♡ 」
私はソファの上に座る仁の膝の上に跨ると、仁の首に腕を回して甘えた声でそう言った。
「うるせぇ。くっつくな。」
そう言いながらも仁は、私がずり落ちていかないようしっかり腰を支える。
「指輪、嬉しかったな…」
私はクリスマスの今日、仁からプロポーズをされた、と思う。
私が断言できない理由は、仁の性格上そういう言葉を明言しない為だ。
―――『お前の指図なら受けても構わねぇ。お前の理想の家族とやらを一緒に作ろうぜ。』
そう言って、仁は私の薬指に誕生石があしらわれた指輪をはめた。―――
私は視界に入る度にキラッと光る指輪を、ぼんやりと眺めた。
「そんなに嬉しいのか。」
「嬉しいよ!だって、仁。私の誕生石わざわざ調べて買ってくれたんでしょ?指輪も嬉しいけど、仁が私のこと考えてプレゼント選んでくれたっていうのが嬉しいの。」
「ふん。そうかよ。」
仁は少し口角を上げて私を見つめた。
「仁、そろそろケーキ食べよっか?」
「モンブランあんのか。」
「もちろんだよ!待っててね、持ってくるから。」
私は一旦立ち上がると、冷蔵庫へと向かった。
冷蔵庫から白い箱を取り出すと、大事そうに抱えゆっくりとテーブルに運んだ。
テーブルに置かれたのは仁の好きなモンブランと、私の好きなショートケーキの2つ。
「ねぇ、仁!見て!」
「あ?」
「これ、色合いがトナカイとサンタさんみたいだね!」
「…。いいから食うぞ。」
私と仁は向かい合って座るとお互いケーキを食べた。
「お前、やっぱり苺最後に残すんだな。」
「好きな物は最後に食べたいんだもん」
「ふん。だが…取られるかもしれねぇぞ。」
そう言うと、仁は私の残しておいた苺にフォークを刺した。
「だめ!!…でも、仁はそんなことしないと思うなぁ…。食べるつもりないでしょ?」
私は勝ち誇った様な顔で仁を見つめた。
「けっ。んな事でドヤってんじゃねーよ。」
そう言うと、仁は刺した苺を私の口に押し入れた。
「んむっ…!…おいしい♡」