第14章 猫/芥川慈郎
《慈郎side》
それは突然の出来事だった。
校庭に生える1番太い木の根元が俺の特等席。
いつもそこで眠っては授業をサボるのが俺の日課だった。
その日もいつものように特等席で眠っていた。
「ふぁぁ~~…そろそろ部活の時間か…」
そう言って俺は、身体を伸ばした。
今まで同じ姿勢で固まっていた骨が、パキパキと音を立てる。
ふと木の根元に視線を落とすと、見知らぬ女の子が眠っているのが目に入った。
制服は同じ学校のもの。でも見たことはないから、違う学年の子か?
一瞬考えてみるも、俺には関係ないという答えに辿り着いたところで俺はゆっくり立ち上がった。
俺は眠い目を擦りながら、テニスコートへと向かって歩いた。
☆☆☆
「おはよー…」
俺がテニスコートに入ると、もう既に全員揃ってアップを始めている様子だった。
「おせーよ!慈郎!もうとっくに練習始まってるっつーの!」
岳人が高くジャンプをしながら、俺にそう言った。
「ごめんね~」と適当にかわすと、俺も練習を開始した。
練習もそこそこに、一時的に休憩していた俺の横に岳人が腰を下ろした。
「そういやさ、今日うちのクラスに転校してきた奴結構可愛かったよな!」
「転校?なんのこと〜?」
「お前まさか…朝からずっと寝てたのか?」
岳人は呆れたようにそう言うと続けて口を開いた。
「今朝紹介されてただろ?ちゃん。」
「んー…分かんないや…あー…眠い…」
「おい!お前寝すぎだぞ!そろそろ練習再開しようぜ!」
「んー…ZZZ…」
「ったく…!」
どうやらそのまま眠ってしまったらしい俺を余所に岳人は練習へと戻ったらしかった。
☆☆☆
結局あのまま部活が終わる時間まで眠ってしまった俺を樺地が担いで家まで送ってくれた。
そう言えば、俺が寝付く前に岳人が転校生がどうのって言ってたっけ。
「まぁ…俺には関係ないけど…Zzz」
俺はそう独り言を呟くと、夢の中へと入っていった。