第14章 猫/芥川慈郎
「…眩しい…」
カーテンの隙間から入る日差しが朝を告げると、その眩い光で目が覚める。
俺は目を細めながらゆっくりと体を起こしていった。
俺は長い欠伸をひとつすると、学校へと向かって歩いた。
☆☆☆
学校に着くやいなや、朝のホームルームにだけ顔を出すと俺はまた特等席へと向かった。
「体育の授業始まるまで寝てよ…」
言い終わるかの寸前のところで俺は既に眠りについた。
しばらく寝ていると、頬に柔らかい毛のようなものが触れたのが分かった。
それはまるで猫のように柔らかい毛並だった。
「…んん…なに…?」
薄目を開けて見ると、栗色の長い髪の毛に隠れた女の子の寝顔があった。
それはスースーと寝息まで聞こえるほどの至近距離だった。
「う…うわぁ!」
思わず体を離し声をあげる。
その声に反応してか、女の子はむくりと起き上がり目をこすっていた。その姿はさながら猫そのものだ。
「ん…おはよう、芥川くん…?」
「…え?なんで俺の名前…」
「私、。この前転校してきたの。」
俺はそれを聞いて岳人の話を思い出す。
そういえば、転校生が可愛いとか言ってたっけ。
色白の肌に栗色の長い髪の毛と同じ色の大きな瞳。
通った鼻筋に薄くて小さい唇。
確かに綺麗な顔立ちをしている。
「私、芥川くんの隣の席になったの。先生が分からないことは隣のやつに聞けって言うから、この前も今日も貴方を探していたのに、貴方ってばいつもここで寝てるから。」
ツンとした表情で、淡々とそう話すちゃん。
「あ〜、そうだったんだね。ごめんねぇ。」
「貴方の羊みたいな髪と雰囲気で、つい隣で眠ってしまって…。ごめんなさい…。」
恥ずかしそうに俯きながらそう呟くちゃんの可愛さと、寝起きのせいも相まって俺の下半身が反応するのが分かった。
「ところで芥川くんは、いつ教室に戻るの?」
ちゃんはそんな俺の状況なんて露知らず呑気に首をかしげて尋ねる。
俺は小さく動くちゃんの唇をずっと眺めながら、そこから出される透き通った声に耳を傾けていた。
「…あの…芥川くん?…聞いてる?」
1歩ずつゆっくり近づき、俺の顔を覗き込むように屈むちゃんの肩を掴んで木に追い詰めた。