第13章 バレンタイン大作戦/丸井ブン太
「ブン太。それ読んだの?」
「ん?どれ?」
「手紙挟まってるよ」
私がそう指摘すると、「ほんとだ」と、その手紙をリボンの隙間から抜き取り紙を開いた。
『付き合ってください♡』
そう書かれた手紙を、私も横から確認した。
「へぇ…そんな手紙ありがたく受け取っちゃったんだ?」
「え…いや!手紙には気づかなかったんだよ!それにくれる時も、義理だよとか言ってた気がするし…」
「周りに聞かれるのが恥ずかしくてそう言っただけじゃない?その手紙がその子の本音だよ、よかったね。もう私からのチョコ要らないじゃん」
なんだかイライラした私は、思ってもないことをつらつらと並べた。
「チョコ用意してんの?」
ブン太のその言葉に、ハッと口を抑えた。
「ちゃんと本命のチョコ用意してるってこと?」
更に問い詰めるようにブン太は聞き返す。
「う…ん…。そりゃそうでしょ…、彼女だもん…」
私は諦めたようにそう答えた。
「ふーん、嫉妬しちゃったんだ?それでそんな可愛くないこと言っちゃったわけ?」
ニヤニヤしながらブン太は私の方へと顔を近づける。
「かっ…可愛くなくて悪かったね…!だって、他の子からのチョコレートそんな嬉しそうに並べちゃってさ?挙句の果てに付き合ってください♡なんて見たら、そりゃ…嫉妬するじゃん…」
「分かった、じゃあ今日貰ったチョコは食べない!だからさ、お前の本命チョコ、くれよ」
「今…持ってくる…」
私はそう言うとキッチンへ行き、カラフルなチョコペンを何本か持って再びブン太の元へと戻った。
「これ…」
そう言って、それをブン太へと渡した。
「は?…え?これ?」
ブン太はただのチョコペンを目の前に出されて明らかに困惑していた。
「これね!湯煎しなくてもトロトロで、このまま使えるんだよ!?」
私は口早にそう言った。
「お、おう…そうか…ありがとう…」
そう言って私の手からチョコペンを取ろうとしたブン太の手を、私は払い除けた。
「…どういうこと?何がしたいわけ?」
私は、手にしていたチョコペンを1本だけ残し、残りはテーブルに置いた。
そして、1本のチョコペンの先を歯で噛んで開けた。
口に残ったペン先を静かに吐き出し、ゴミ箱へと捨てると
開けられたペン先から少し溢れだしているチョコレートをブン太の頬に垂らした。
