第12章 要注意人物/忍足侑士
《夢主side》
今日は20歳を迎えて初めての大学の新歓コンパ。
去年まではお酒は飲めなかったけれど、今年は年齢を気にせずに飲むことができる。
私の入っているテニスサークルのみんなと新1年生を歓迎するという名目の単なる飲み会。
大体毎年そうなんだけれど、1年生は一次会でほとんど全員帰ってしまう。
そりゃ慣れないメンバーに慣れない場所で1時間も居ればすぐに疲れてしまうのが人ってものでしょう?
二次会からが本番って思ってる人も少なくないみたいで、羽目を外してどんちゃん騒ぎ。
去年まではシラフでその様子を見ていた私だけれど、今年は酔ってその輪に入る事が出来ると思うとワクワクする。
テニスサークルの一応リーダーみたいになっている忍足先輩が乾杯の音頭を取ろうとしていた。
「みんな今日は楽しんでってな?ほな…乾杯」
そう言って乾杯を促した忍足先輩だったけれど、“腹から声出せ”やら、“聞こえないぞ”やらのヤジが飛び交っていた。
みんなそう言いながらも、各々好きなように近くの人達とグラスを重ね合わせた。
私は普段から仲が良く気心知れた女友達の近くに座っていた。
『!今年は合法的に飲めるねぇ!自分のキャパ知らないんだからあんまり飲みすぎないでよね?』
友達は10代の頃から飲酒していたため、初めてお酒というものを飲む私を心配してそう言ってくれた。
「分かってるよ」
そう言って口元に運ぶグラスには人生初のお酒、カシスオレンジが注がれていた。
「ん!めっちゃ美味しい♡ジュースみたい!」
『甘いお酒は酔い回るの早いから気をつけなよ〜』
そう言うと友達は、ビールジョッキを一気に傾け、喉を鳴らしながら飲み干した。
「すごい飲みっぷり…」
呆気に取られている私を見て友達は笑っていた。
☆☆☆
予定していた1時間より30分ほど過ぎてお開きになると、予想通り1年生たちは我先にとみんな帰ってしまった。
かくいう私も、1件目で飲むペース配分を間違えたようで既にフラフラの千鳥足状態になっていた。
カシオレの後に飲んだものと言ったら、ファジーネーブルにカルーアミルク、それに杏露酒。友達の忠告を無視し、甘いお酒ばかりに手を出した。
『二次会カラオケ行こ〜』
『いいねー!』
ぼんやりした頭にそんな声がこだまする。