第10章 彼氏の特権/越前リョーマ
「お、おい越前!メイド喫茶だなんて聞いてねぇぞ?」
席に座るなり、桃先輩は口元に手を当てながらコソコソと俺にそう言った。
「…。俺だって聞いてないスよ…。」
俺はそう言うと、改めてを見遣った。
鎖骨が見えるほどのオフショルダーに、しゃがむと下着が見えそうなミニスカート。それに男は絶対に好きであろう絶対領域と言われる部分を強調するかのようなニーハイソックス。
『ねぇねぇ!そこの猫ちゃん!注文いい??』
『猫ちゃんはやばいだろ!』
他の席に着いているどこかの男子が騒がしく俺の彼女を呼んだ。
「はい!注文ありがとにゃん♡ 」
楽しそうに猫の手のポーズまでつけて笑うを見ると俺はどんどん不機嫌になっていく。
そんな俺を察してか、桃先輩が口を開いた。
「ま、まぁ、そういうマニュアルなんだろうよ。ははは…。」
注文を取り終えたは、厨房へとそれを通したあと、グラスに水を注いでいた。
水の入ったグラス3つをお盆に乗せて、俺たちのテーブルへと向かってくる。
「ごめんね、はい、お水。」
そう言っては、それぞれの前に水を置いた。
「。聞いてないんだけど?」
俺は堪らずそう言った。
「だ、だって…メイド喫茶やるって言ったら、リョーマ怒ると思って…。」
しどろもどろに目を泳がせながら答える。
「隠されても怒るけど?」
「ま、まぁまぁ越前!とりあえずなんか注文しようぜ?」
慌てて桃先輩は俺を宥めた。
すると、の後ろから英二先輩が近づいてくるのが見えた。
「ヤッホー☆おチビちゃんたち!どう?似合うでしょ?」
英二先輩はの肩に手をかけながら、を指さした。
「わぁ!びっくりした…もう、やめてよ英二…」
「じゃあ、オレンジジュース3つ。早くして。」
俺はその光景を見ながら、口早にそう言った。
「あ、うん!待ってて!」
パタパタと走るを、他の客がニヤニヤしながら目で追いかける。
俺は無意識の内にため息を吐いて小さく舌打ちをしていた。