第8章 蜜柑/幸村精市
数分後、私はカゴいっぱいのみかんを持って部屋へと戻った。
「いっぱい持ってきたね」
精市は優しく笑いながらそう言った。
「なんかね、パパママどっちもいなかったー」
初売りでも行ったのかなー、と言いながら私は小さいテーブルの上にみかんの入ったカゴを置いた。
私がテーブルに向かって座ると、その後ろに精市がやってきて、自分の股の間に私が入るような体勢で座った。
そのまま私の肩の上から手を伸ばし、私の頭の上に顎を乗せた。
「重いよう、精市さん」
私はそう言いながらみかんを剥いた。精市もみかんに手を伸ばして、その体勢のまま2人でみかんを食べていた。
「やっぱり冬はみかんだよね」
みかんを口に入れながらそう言った私の前には、もう既にみかんの抜け殻が3つも置いてあった。
「…食べ過ぎじゃないかい?」
精市はというと、まだ1つ目の半分ほど食べている辺りだった。
「うー、まだ食べたい…」
「仕方ないな、はいどうぞ」
精市は自分が食べていたみかんの実を1つ取ると、私の口に突っ込んだ。
「んむっ、あいがと…」
「…離してくれる?」
私は勢いで精市の指までしゃぶってしまったようだった。
「ご、ごめん!みかんだと思った…」
「美味しいかい?」
精市は張り付いたような笑顔でそう私に問いかけた。
私には分かる。これは、多分、“スイッチ”が入ってしまった。
「お、おいしい…でも、もう要らないかな?」
「どうして?もっとあげるよ、ほら」
そう言って精市はみかんを持っている指を、また私の口の中へと突っ込んだ。
「んぐ…」
精市の指によって、みかんは私の口の中を這い回った。
舌と、ヌルヌルになったみかんが絡む感覚はまるでディープキスをしているみたいだった。
「下のお口にもあげようか」
精市は笑顔を崩さずに、私を床に押し倒した。
纏っていた身ぐるみを、精市は否応なしに剥がした。
「あれ?もう食べたそうによだれ垂らしてるよ。はしたないなぁ、は。」
今まで私の口の中を這い回っていたみかんを、精市は私の中へと入れた。
「あっ…やだぁ…」
「おかしいな、食べさせても食べさせても直ぐよだれと一緒に出てきちゃう」
「んんっ…」
決して激しくない刺激のはずなのに、私の体がどんどん敏感になっていくのが分かった。