第5章 叶わないなら力尽くで/菊丸英二
「えーと…、今教頭先生がおっしゃった通りなんですが、今月中に籍を入れて、来月いっぱいで保健室の先生としての仕事を一旦離れることに致しました。突然の辞任で、生徒のみんなや、先生方にご迷惑おかけする事、申し訳なく思いますが、もう少しの間よろしくお願いします。」
終始嬉しそうに、恥ずかしそうに話す先生を俺は真っ直ぐ見ることが出来なかった。
先生が話し終えて、1歩下がり一礼をした。
全校生徒が拍手をする中、俺は膝を抱えて俯いていた。
☆☆☆
全校集会が終わり、皆が通常の生活に戻る中、俺の足は保健室へと向かっていた。
俺はいつもはしないノックを軽くして、静かに保健室の扉を開けた。
「あれ?菊丸くん。また怪我したの?」
人の気も知らずに、先生はふふっと優しく俺に微笑みかけた。
「うん…、ちょっと、痛くて…」
あからさまに元気のない俺を、さっきまでの笑顔を消して心配そうに先生が見つめる。
「どうしたの?何処が痛いの?」
そう言って先生は俺の元へ駆け寄った。
「…ここ」
俺は、自分の胸を拳で叩いた。
「…?ぶつけたの?」
先生は不思議そうに俺を見る。
「違うよ、心が痛いんだよっ」
「もう、からかわないの。」
「これがからかってるように見えるのかよ!」
普段とはまるで別人の態度の俺に、先生は目を丸くした。
「先生、結婚するんでしょ?」
そう言うと、少し顔を赤くした先生の口元がほころぶ。
「むかつく…」
そう言って、俺は先生の口に無理やりキスをした。
先生は俺の胸板を、握った拳で数回叩いた。
「ぷはっ…ちょっと菊丸くん!?何するの!?」
先生は怒ったような顔をしていた。
「先生だけ幸せになんかさせてやんないからね。今から先生の中に俺を刻むから、覚悟しといて。」
そう言って、俺は力尽くで先生をベッドに押し倒し、カーテンを勢いよく閉めた。
「菊丸くん!こんなことしていいと思ってるの!?」
こんな状況でも、先生面して俺を叱る先生の口をまた塞ぐようにキスをした。
「俺がどんな気持ちでここに通ってたか分かんない?」
俺は先生の両手首をグッとベッドに押さえつけて、足を開かせるように覆いかぶさった。
「菊丸くん、どかないと本当に嫌いになるよ。」
先生は俺をキッと睨みつけた。
「どうせ俺のものにならないなら嫌われたってかまわないよーだっ」
