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裏・テニスの王子様♡

第5章 叶わないなら力尽くで/菊丸英二


《菊丸side》

「せんせぇ〜☆また怪我しちゃった!」

俺は保健室の扉を勢いよく開けて、密かに恋をしている先生の元へ駆け寄った。

「しー。今ベッドで休んでる生徒いるから。」
先生は人差し指を自分の口の前に持っていき静かにそう言った。
その細くて白い指と、オレンジ色のリップがほんのり塗られた唇に目を奪われながらも、俺はいつもの調子を崩さなかった。

「ごっめぇん☆でさでさ、ここなんだけど…」
と、俺は膝に出来た小さい擦り傷を先生に見せた。

「また派手に跳んだんでしょー?もう、あんまり無茶しちゃダメだよー?」
なんて言いながら、手際よく消毒して絆創膏を貼ってくれた。

「はい、出来た」
ポンと俺の膝を叩いて、先生は顔をあげた。
その顔が思ったより近くて、俺はふいと顔を背けた。

「ありがと〜せんせぇ☆」
顔が赤くなったのを悟られないため、俺は直ぐにくるっと振り返り保健室を後にした。

俺のこの気持ちは誰にも言ったことがなかった。
まだ17の俺が、去年赴任してきた先生に恋してるなんて
大石にすら口が裂けても言えっこない。
だから俺は、テニスで小さい傷を作っては、1人保健室に足を運ぶんだ。

☆☆☆

そんな日々を送って3ヶ月。
全校集会が開かれると言うことで、皆体育館に集まった。

『今日は皆に報告があって集まってもらいました。』
教頭が業務的に淡々と進めた。

『まずは、養護教諭の先生。ステージへ上がって下さい。』

俺は突然の想い人の名前にパッと顔をステージに向けた。
先生は心無しか恥ずかしそうにぺこっとステージに一礼してマイクの前に立った。

その様子を見届けた教頭がまた淡々と話し始めた。
『えー、去年から養護教諭として来てもらっていた先生ですが、めでたくご結婚なさると言うことで、来月いっぱいで辞任することとなりました。』

体育館中から歓声が上がって、中にはおめでとう!など祝福を送る生徒もいた。
俺は心臓に針でも刺されたのかと思うくらい、ズキズキという痛みを感じた。
そんな俺の痛みなんて完全に無視して、集会は進められた。

『では、先生。一言お願いします。』
教頭にそう振られた先生は、はい、と小さく言って、マイクに近づくように1本前に出た。

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