第1章 ピンク色した世界/桃城武
「次、移動教室だよ」
「あ、…って、残ってるの俺らだけじゃねーか!」
「だって桃城くんなかなか起きないんだもん」
は困ったように眉毛を八の字にして笑った。
俺は言うなら今しかねぇと思って口を開いた。
「あ!あのよぉ、お前、彼氏とか…いんのか?」
「え…どうしたの急に…。えと、彼氏はいないよ…」
そう答えると、はふっと目を逸らした。
「んじゃ、好きなやつは?」
「…ん、いる…。」
は恥ずかしそうに俯いて顔にかかった髪の毛をさらっと耳にかけた。
「!?…そうなのか?あー、じゃあ俺の気持ち迷惑かもしれないけど…。まぁ聞くだけ聞いてくれよ。」
俺がそう言うとは静かに頷いた。
「俺さ、お前が転校してきた時、一目惚れしたんだ。お前がマネージャーになってくれた時、嬉しくてよ。お前のこと見る度、俺、お前のこと好きだなぁって思ってったんだ。まぁ付き合ってくれなんて言わねぇよ。お前の恋だって応援するから、今まで通り部員とマネージャー、クラスメートとして…」
俺が言い終わるのを阻止するようにが口を開く。
「ちょっと待って!勝手に終わらせようとしないでよ…。」
「…え?」
「…桃城くんだよ…」
「…何が?」
「私の好きな人!桃城くんだから!」
俺は一瞬思考が追いつかず固まった。そして理解した瞬間、机を挟んだまま、勢いよくに飛びついた。
「ほんとか?ほんとなんだな?」
「だ、だって桃城くん分かりやすすぎるんだもん!私の事見すぎだし、この前だって菊丸先輩にからかわれて…」
「なんだよ!見てたのかよ〜!」
俺は抱きしめたまま、左右に揺らした。
「そんなことされたら、私の事好きなのかなって自惚れちゃうし、意識しちゃうもん!そしたら、好き…になっちゃったの…」
「そ、そうか?なんか照れるぜ。」
「そ、それで、さっきの続き聞かせて?ほんとに今のままクラスメートでマネージャーでいいの…?」
「いーや!よくないな、よくないぜ」
俺は首をブンブン横に振ってそう答えた。
「。俺の彼女になってくれ。」
「うん!なる!」
は満点の笑顔を俺に見せた。