第3章 風紀の乱れは心の乱れ?/大石秀一郎
《夢主side》
私には好きな人がいる。同じ学年で風紀委員の大石秀一郎だ。
大石は毎朝、校門の横に立って、主に生徒たちの身だしなみをチェックしていた。
「こら!ちゃん!またスカート短いよ!」
私は大石に声をかけられたくて毎日スカートを短くしていた。
風紀委員、校則、というものは一応あるものの、先生たちは成績さえ落とさなければ何してもいいというスタンスの高校だったので、私の他にもイヤホンで音楽を聴く者や、髪を明るく染めてる者などもいた。
そんな中でも大石は、自分の仕事だから、と毎朝校門に立っていた。
ある日。私がいつものように校門をくぐろうとすると、大石が声をかけてきた。
「ちゃん、スカートいつもより短くしてるでしょ?だめだよちゃんと着なくちゃ」
確かに今日はいつもより1つ多く折っていた私は、よく見てるなぁと思いつつ、嬉しくも思っていた。
でも、私の口をついて出た言葉は私の思いとは裏腹なものだった。
「大石さぁ、毎日女子のスカート見て、変態なの?」
私がそう言うと、大石は顔を見る見る赤く染めあげた。
「ち、ちがうよ!俺は風紀委員として…!」
「焦るところが逆に怪し〜!図星なんじゃないの〜?」
私はケラケラ笑いながら大石をからかった。
大石がまだ何か言ってるのを聞かずに、その場を立ち去る私は自分でも可愛くないなと思う。
(今日はいつもより話せた…。さっきの大石可愛かったな…。)
そんなことを思いながら教室へと向かった。
☆☆☆
次の日。学校に向かうと、校門付近で大石が、他の女の子に声をかけていた。
「ちょっと君たち。スカートが少し短いんじゃないか?」
『えー?なんすか?てか人のスカート見るとか変態じゃん?』
女の子が大石に向かってそう言うと、また大石が顔を真っ赤にして怒った。
昨日私がしたやり取りを、他の女の子ともしてる。
その光景を見た瞬間、無性に腹が立って、いても立っても居られず体が勝手に動いた。
「ちょっと!大石をからかっていいのは私だけだから!」
私はそう言って大石の腕を掴んだ。
そんな私を驚いた顔で見る大石にも食いかかった。
「あんたも!私以外の女の子にからかわれて鼻の下伸ばしてんじゃないよ!」
『はー?もう行こー。』
女の子たちはこの茶番を呆れながら見て去っていった。