第1章 1杯目
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「ハーイ、ポール。
いきなりで申し訳ないんだけど、会わせたい人がいるのよ。
今日は何か仕事入ってたかしら?」
「残念ながら今日は様子見で帰ろうかと思ってたところ。
迎えに来てくれるんなら会ってもいいよ」
「あら、ちょうど良かったわ。そっちに向かってた所だったから。
そうしたら少しだけ待っててくれる?すぐ着くと思うから」
ベルモットからの電話。
足が出来たのはありがたいが、正直苦手な人だ。
勿論、尊敬する。
今の私があるのは彼女がいたからと言っても過言ではない。
美しく、強い。
だからだろうか。
見劣りしてしまって、私の存在価値が無くなる気がして。
そんな彼女からの会わせたい人。
「………ジンくーん、足見つかった」
「そうか」
「ねえねえ、ベルモットが私に会わせたい人がいるんだって。
全然心当たり無いんだけど誰だと思う?」
「……新しい客じゃねえのか」
ジンくんは興味がなさそうにタバコに火を付ける。
多分、私と同じで心当たりが無いんだとは思う。
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