第2章 2杯目
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確かに美容室で細いと言われた気がする。
人の髪触っただけで分かるのか。
「透くんって何が出来ないの?」
「何が出来るの、の間違いでは?」
「いや、今のところ完璧過ぎて引いてる」
実際引く。
だってまだ出会って数時間。
何が出来ないんだこの人ってくらいそつなく、完璧にこなしていく。
なにか言いたいのか、うーんと
悩ませていたが少し表情が濁った。
「僕にも、出来ないことはありますよ」
「………そっか、まあ人間完璧じゃないしね」
言いたくなさそうだから聞かない。
あ、そうだ。
「ごめん話し変わるんだけど透くんいくつ?」
「29になりました」
「やっぱり、歳上だ。………このままの口調で話しても大丈夫?」
「大丈夫ですよ。
むしろ今更話し方を変えられても違和感があるかもしれませんし」
「透くんも敬語じゃなくていいのに」
「敬語の方が楽ですし探りも入れやすいですから。
……ベルモットの仕事の時は敬語じゃないかもしれませんが」
「全然大丈夫」
「さて、僕もシャワーを浴びて来ますので
少し待ってて頂けますか、お嬢様?」
サラサラ髪の毛ですっかり忘れていたが
そういう事をしに来たのだった。
「寝ちゃうかもしれないから、早めにね」
「善処します」
そう言ってシャワー室に向かった透くん。
なんだか彼と話してると、いつもの調子が出ない。
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