第1章 1杯目
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「………透くんが良ければプライベートでも
会いたい、かも。そう思うの初めてだから
なんかこんな事言ってんの恥ずかしい」
外を見ながらぶっきらぼうに話す。
全く、可愛げないな。なんて自分で思う。
透くんが鼻で笑う。
「そんな可愛い事を言われると
今日は少し帰したくなくなりますね」
「………意外」
「僕も男なんでね、いいですかポール?」
「……バーボン、今日は寝かせないで」
「随分我儘なお嬢様だ」
私の家の方ではなく、ウインカーを上げた方向はホテル街。
薄暗い空に似合わないネオン。
運転中の隣の彼をチラリと見る。
目が合った。と、思ったら口角が上がった。
凄く、色っぽい。
「……透くん、良く色っぽいって言われない?」
「今、初めて言われました。
乃々華さんは良く可愛いと言われないです?」
「可愛いよりはキレイとかのが多いかも」
「…………そいつらは、見る目がない」
信号で止まる。
トントンと肩を叩かれて透くんの方を向いたら
透くんの親指で唇をなぞられた。
「なに?」
「早く乃々華さんを味わいたいなと」
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