第1章 好きだった
「…………っ!!」
次の瞬間、棘は三須に飛び掛かる。
ぐっと力一杯握った拳を振り上げた。
「待て、棘っ!!」
パンダの声が大きく部屋に響いて。
棘はその声に気が逸れたのか、一瞬の内に真っ直ぐに顔を狙ったはずの三須はそこから消えていた。
パリンッと、ガラスが割れる音がして、姿がなくなる。
「逃げたっ」
棘が三須を追おうと窓に駆け寄った時だった。
「や、だ…やだ、やだやだっ!!嫌っ!棘、く…、行かないでっ!置いて、行かないで……っ!!」
真希の腕をぎゅっと掴み、涙をいっぱいに溜めて棘を見る唯。
「アイツは俺たちが追うから、棘は唯を。真希行くぞっ」
「ああ、絶対許さねぇ」
棘は唯に駆け寄る。おずおずと伸びた唯の手が棘に触れた。真希は立ち上がり棘に一瞥して合図を送ると、パンダを追って駆け出す。