第1章 好きだった
ぎゅっと瞳を閉じて、首を振る。シーツを握り締めて、嫌だと否定するが、抵抗は出来ない。
そっか、と低い声が聞こえた。
「すぐに、忘れさせてあげるよ」
瞬間、頸に鋭い痛みが走った。
「…………っ!!」
熱い。身体が熱い。
身体中に、不快なくらい一気に熱が上って。頸の痛みなんか忘れてしまうくらいに苦しく感じた。
上手く空気を吸い込む事が出来ない。
「……ぁ、………っ、」
シーツを握る手に力が入る。
拘束はいつの間にか解けていて、自由になった唯は呻きながら蹲る。
棘くん。
胸の中でそう呟きながら、甘い匂いに意識を奪われていく。ふわふわする意識の中で、目の前のその人は唯の頭を優しく撫でた。
棘くん…?
番となったαの甘い香り。その香りに、満たされたくて。
息が上がり、身体が火照る。
唯は赤くなる顔をゆっくり上げて手を伸ばした。
棘くん、たすけて…
伸ばした唯のその手は、気持ちとは裏腹に彼を求めた。