第6章 あなたとともに
棘は立ち上がり、ホースを巻いて片付けに向かう。蛇口の横に丸めたホースを置いた。
唯も立ち上がりその後ろ姿を目で追う。
小柄な体格だけど、唯のそれとは違う彼の背中。
その背中に手を伸ばそうとして、辞めた。
「…………」
唯は目を伏せる。
それからもう一度見た地面には、
“ フウセンカズラ ”
“ 花言葉 ”
“ あなたとともに ”
張られたネットには小さく、でも青々として元気に四方に蔓を伸ばしていく生命力に溢れた植物。水を帯びて、陰り始めた陽でキラキラと光り輝いていた。
あなたと共に。
唯は喉の奥で、小さく繰り返して呟く。
ーー共に。
一緒に居てもいいんだと。
その言葉は唯の胸にすとんと落ちて、柔らかく広がって染み込んでいった。