第6章 あなたとともに
「でも…、夕練は…?」
元々約束をしている訳ではないけれど。
1、2年で空いているメンバーは、姉妹校交流会から何となく集まって鍛錬に励んでいた。
聞くとまた、悪戯な笑顔が返ってくる。
「おーかーか」
言って笑った。
ピースしたままの中指を折り、人差し指を一本立てて口元に持っていく。
“ みんなには内緒 ”
ーーと、言われた気がした。
ドキドキと胸が早鐘を打つ。
口元が無意識に緩んだけれど。
ーーその時ふと、過ったのは。
望まない番である三須の顔だった。
Ωにとって番であるαは心も身体も繋がった特別な存在。
番である繋がりはないけれど。
ーーでも。
棘くんが大好きだと言うこの気持ちは。
この気持ちだけは、
番いとか、発情期〈ヒート〉とか、身体とか、全部何も関係のない、純粋な自分の気持ちだから。
やっぱりどうしようもなくて。
胸が痛むけれど。
それが何処か、心地の良い痛みにも思えた。