第4章 同級生
「悪かったな。棘じゃなくて」
隣で頬杖をついて片足を組み、さも詰まらなそうに真希が呟く。
カーテンはいつの間にか閉じられ、室内は蛍光灯で照らされていた。
「…別に…!そんなんじゃ……っ」
真っ赤になって見上げれば、真希は訳知り顔でニヤリと笑う。
「ついさっきまで居たんだけどな」
「…………?!」
唯の反応を伺い、笑う真希。
ーーαである自分は、唯の側にいない方が彼女の為だと。
聞いたその言葉を、真希は飲み込む。
「また明日来るってさ」
唯はその言葉に、静かに頷いた。
はぁ、と真希はあからさまな溜息を吐く。
目を細め、ジト目で唯を見た。
「んな顔すんな。分かり易すぎるだろ」
「…なっ!だから、そんな事ないって…っ」
慌てて否定するが、熱くなった頬が赤いのは唯もまた自覚していた。
たぶん、熱のせいだけではない。
「そんな事って何だよ」
何も言ってねぇよ、と口の端が持ち上がる。
唯は唸って目を逸らした。
「…………」
「まぁ、アイツの事だから、何だかんだ理由着けては、毎日見舞いに来るだろ」
誰とは告げない真希はその言葉に笑うけれど、それ以上は何も言わなかった。
「だから、安心して寝とけ」
コツンと額を拳ではたかれた。
「まぁ、体力も落ちてるだろ。とりあえずゆっくりしとけって」
真希の言ったその言葉はおそらく家入のものだろうか。
「唯が寝るまで、しばらくここに居てやるよ」
真希の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。
「ありがとう」
その心遣いがとても嬉しい。
ひとりになるのは、今はやっぱり少しだけ怖かった。