第3章 唯一の真実
大好きで、大好きで。
きっと片想いだと、わかってはいたけれど。
こうして側にいて、唯に寄り添ってくれる、
友だち。
「…………っ」
僅か鼻を掠めるαである棘の香り。
ふわりと香るその匂いに、唯は顔を逸らす。俯いで、握られていたその手を離した。
大好きな、棘くんの匂いだったはずなのに。
別のαと番になった今はそれが、本能的に気持ち悪くて仕方がない。
唯は俯いたまま両手で鼻先から口元を抑えた。
涙が溢れて止まらない。
胸が苦しい。
その手を握って。
友だちでも構わないから、触れていたかった。
…なのに。
触れる事すら、嫌だと感じる日が来るなんて。