第2章 君を想う
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眠る彼女からは、微かに自分の残穢を感じる。
これは呪言のせいだけではないだろう。丸2日間目を覚さない唯。
呻くように小さく顔を歪めた唯は、僅かに腕を動かして。
棘は思わずその手に触れた。ぎゅっと握れば、無意識に握り返されたその手は温かい。
真希もパンダもそれには何も言わなかった。
ーー俺は彼女と番になる。
それはただの直感だった。
運命とか、そんなものじゃない。
「風音唯です。狗巻棘くん、よろしくね」
笑った彼女は、その手を棘に差し出した。
入学式初日。
吊り目がちで、目付きもあまり良い方だとは思わない。
ネックウォーマーで口元を隠して、言葉もなく。相手に合わせて故意に笑うつもりなど毛頭ない。
全てにおいて、他者から一歩引かれて育った。
それでいいと思っていた。
ーー さよなら 。
そう、告げて。
去って行く誰かの背中を、知っているから。
「しゃけ」
と小さく告げて。
その日棘は唯の手に触れる事はなかった。