第2章 君を想う
ぼんやりと開いた目に入ったのは白だった。
白。真っ白の無機質な天井。
左側には点滴がある。
反対側には、温かな人肌のぬくもり。
視界が揺れて歪む。どうしようもなく悲しかった。唯の目尻からは無意識に涙が溢れる。
「……ツナ?」
聞き覚えのある語彙に、ぼんやりしていた意識が呼び戻されるようにハッキリしていく。
色素の薄いマッシュルームヘア。ネックウォーマーで口元から鼻先まで隠して、覗く紫の瞳はアメジストのように深い色をしている。
綺麗なその瞳は、唯を見て僅かに揺れていた。
「…とげ、くん……?」
「こんぶ」
目元を細め、安堵した様子で唯を見る棘。
「…唯っ!!」
棘の向こう側に、ほっと息を吐いて笑う真希。
反対側にはパンダの姿があった。
「真希ちゃん?パンダくん?!」
唯は慌てて身体を起こす。
上半身を持ち上げようとしたが、やけに重たい身体には上手く力が入らず、そのままふらりとよろけてしまった。
「高菜っ」
真希と棘の手がほぼ同時に唯を支える。
「っ、あぶね。無理すんな。2日間も寝てたんだから」
起こした身体を支えられる形で座り込む。
鈍く痛む頭に片手を添えた。
「……2日?」
ふつか。そんなに長い時間…?
唯は頭を押さえて俯き、靄のかかった曖昧な記憶を辿る。