第5章 溶けた氷の中は
宇髄はあまりの事に思考がついていかない。呆けたように玲華を見つめる。
「、、、今のは忘れて下さい。」
返事がもらえず、振られたと思ったのだろう。玲華が、すっ、と立ち上がってそんな事を言う。
「、、、待てっ」
立ち上がった玲華の手を宇髄は慌てて掴んだ。振り返った玲華は泣きそうな顔をしていた。
「悪かった。そんな顔、すんなよ。」
宇髄は手を引くと、玲華を抱きしめた。
「お前に先越されるとは思わなかった。心臓が飛び出るかと思った。」
宇髄が玲華を見つめる。
「好きだ、玲華。お前が俺を好きになるより、ずっと前から。俺はお前しか見てなかった。」
玲華の目から、ぽろっ、と涙が溢れた。宇髄は親指で涙を拭うと、そっと触れるだけの口付けを落とした。
「やっとお前に触れた。あったかくて、やわらけぇ。」
宇髄は2度、3度と口付けを落とす。玲華からは、幸せそうな音が響いている。