第3章 氷を溶かしたい
「宇髄か。」
「悲鳴嶼さん、お久しぶりです。」
「2人で追いかけっこか?」
「いや、そういうつもりじゃなかったんですけど。」
悲鳴嶼は自分の後ろに隠れている玲華の様子をそっと伺った。玲華は震えている様だった。
「彼女に何か用か?」
「会いに来たんです。」
それを聞いた玲華が、ぴくり、と体を縮めた。
「宇髄、彼女には時間が必要だ。少し待っててくれ。」
悲鳴嶼は玲華を連れて、蝶屋敷の奥に向かった。部屋にでも連れて行くのだろう。宇髄はそれを見送るしかなかった。
「ここにいたのか、宇髄。」
「、、、悲鳴嶼さん。」
宇髄はさっき玲華が鍛錬してた裏庭に立っていた。悲鳴嶼が縁側に腰掛ける。
「さて、どこから話そうか。」
「悲鳴嶼さんは、ずいぶん玲華と仲がいいんですね。」
玲華が悲鳴嶼を見つけた時にした音は、安堵の音だった。
「元々あの子を助けたのは私なんだ。」
柱になってすぐの頃、鬼から助けたらしい。両親と姉は鬼に殺されてしまった。
「玲華は10になるかならないかの子供だった。その後も心配でたまに様子を見に行ってたんだ。ある日帰る時に、彼女は私に付いてきた。」
『お願い。一緒に連れてって。』
「聞くと、引き取った親戚からひどい扱いを受けていたらしくてな。返すわけにもいかず、蝶屋敷で引き取ってもらったんだ。」