第14章 夢の果てまで
訳も分からず見つめていたものの、みるみるうちに困った顔になり、
「……? 泣かないで……」
ネアは狼狽えた声を掛けては、泣き止ませようと細い腕でを抱き締める。
「が泣くの、かなしい。おれ……」
シューシューと小さな音を立てて伸びた、ネアの紅い舌先が涙に触れた。
が視線をそちらにやれば、涙を舐め取ったネアが口角を上げる。
満足気に目を細め、
「また会えて嬉しい」
をぎゅっと抱く。
無邪気に笑った。
ネアの身体はひんやりと冷たく、は一瞬たじろいだが、彼の四肢に巻かれていると不思議と落ち着いた。
滑らかな鱗に覆われた長い下肢も、ほっそりとした両腕も、心地好く感じる。
「あの……」
「なに?」
「なんで、なんでネアさんは……そんなにわたしにこだわるんですか……」
の表情に影が落ちる。
彼が自分を追い求める理由が分からず、盲目的な愛が不安になる。
ネアの不器用な愛をぶつけられる度、心が苦しくなっていた。
「それに……わたしの名前、まだ教えてません……一度も、伝えた事ありません」
緊張で乾いた口から必死に絞り出す。
ネアは無言でを見つめている。
「貴方、誰なんですか」
「……おれもと同じ場所で売られてたから。奴隷だったから。のこと、ずっと前から知ってるよ」
そう言い、ネアは寂しげに微笑した。
は彼の言葉に愕然とする。
「奴隷市場で……!」
「おれ……捕まえられて、くびわとくさりされて。ずっと飼い殺し。主人がぐるぐる変わってた。売られて、買われて、また売られる」
ネアはそこで巻き付けていた身体をから離し、ベッドに凭れた。