第21章 ばいばい
何もかもから解放されたは無言で壁を見つめていた。
「……よお」
そんなの前に現れたカルファ。
顔の横で小さく手を上げ、高い位置で頭を下げた。
「久しぶりだな。悪い……これでもなかなか忙しくてな」
はカルファを一瞥することもなく、黙りこくっている。
「なあ貧乏……いやもう貧乏じゃねえな、あーもうどうでもいい! お前さあ、とうとうおかしくなっちまった訳? どこ見てんだよ。つーか人の話聞いてる?」
カルファは自分の小さな額を掻き、短い息を吐いた。
「……まあ別にいいか。お前は充分稼いでくれたよ」
「…………」
「お前のおかげで俺の娼館は大繁盛だよ。1番の稼ぎ頭を失ったのはいてーけど、広めてくれてありがとな」
「…………」
「そんな顔すんなって……って、あ、なんかこれ前も言った気がすんな」
「…………」
「……お前、俺の前で一度も笑わなかったな。お前の笑顔、見たことねーや」
「…………」
「ああ大丈夫、お前を捨てたりなんかしねーよ。お前なら壊れちまっても、欲しがるやつはわんさかいるだろ……娼館はもう無理だ、っつってるだけ」
「…………」
「なんなら俺がまた前みたいに飼ってやってもいいぜ? ん?」
「…………」
「あはは、それもそうだな……」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」