第2章 競り市
「なんだその顔は? 俺に口出しするなと再三言ってるだろ」
「……畏まり、ました、申し訳ございません。わたくしは貴方様の命令に従うのみです」
そう言うと、サピルーンは恭しく頭を下げた。
当の本人はサピルーンの謝罪する様を見届けたのかそうではないのか分からないほど早く視線をステージに戻し、
「おいオッサン! そこの人間の女を買うぜ、さっさと競りを始めろ!」
あらん限りの声で叫んでいた。
妙齢の鹿の女の競りで盛り上がっていた会場が水を打ったように静まり返り、声高に値段を競り上げていた鳥人の男が声の方向を睨みつける。
肩をいからせ、羽毛で覆われた胸を大きく膨らませながら精一杯の笑顔を浮かべる。