第2章 競り市
サピルーンは肩までガクガクと震わせ、堪らず椅子から腰をあげる。
「何故……何故、奴隷売買に……!」
冷静さに欠けたボヤきが勝手に口を突き、サピルーンは目を見開いていた。
ドクドクと早鐘を打つ心臓を抑え、記憶の中の少女と、奴隷として売られている女性を重ね合わせる。
猫の青年は表情すら変えることも無く、淡々とした調子で呟いた。
「んー……よし決めた、そいつを買うぞ」
「え……」
サピルーンは呆然とし、主君である彼を信じられないとでも言うような表情で見下ろす。
「お坊ちゃま、まさか、彼女を館で働かせるのですか?」
ぎこちない喋り方で、必死に問いかける。
額から汗が流れ落ちるも、それをハンカチで拭く余裕すら無い。
猫の青年はサピルーンの質問にムッとした様子で、ゆっくりと目線を上にやった。
足を組んだまま、硬直したサピルーンを真ん丸な瞳で見据える。