第10章 乱痴気
厳重に閉ざされた部屋。
家具はどれもが大きく頑丈そうで、豪華な作りをしている。
部屋の奥で一人の男が荒く息を吐き出している。
「ふーッ……」
僅かに肩を震わせ、身体からむんむんと熱気を発する狼男。
アルド王だった。
アルドはベッドに腰かけ、眉間に深く皺を刻み、黙り込んでいる。
静かに俯いていると、
「ん……?」
城では聞きなれない足音が耳に伝わる。
思うように働かない頭で、ふらふらと扉に向かう。
部屋の扉を解錠し、ドアから顔を覗かせた。
「わっ!」
ドアノブに手をかける前にドアが開き、は驚いた声を上げる。
それ以上に驚いた顔のアルド。
身体を火照らせながら、を見下ろす。
「な……なんで、ちゃんが……」
「ごめんなさい、突然。でもいつものお返しって事で……カルファ様に何とかお休みを頂いて、アルドさんに会いに来たんです」
全身を震わせ、短い呼吸を繰り返しながら必死に訊ねる。
「城の者は。誰もちゃんを、止めなかったのか……?」
「アルドさんに頂いた、王族の紋章が入ったペンダント……門の方にこれを見せたらすぐに入れて頂けました、アルドさんの部屋も教えて頂いて」
アルドの頭に門番の顔が浮かぶ。
最近城に入ったばかりの新参者。
ギリッと歯噛みし、
「あの、野郎……いくら、新入りだからって……ふざけたまね……を」
荒っぽい口調で吐き捨てる。
は不思議そうに小首を傾げる。
今のアルドにはどうも話しかけづらい雰囲気があり、手にした包みをいつ渡すか考えあぐねていた。
アルドはくらくらとする頭を手で押さえ、
「あーもう、無理だ……」
の手を荒々しく掴む。
「えっ?」
そのまま自室に引っ張り込んだ。