第8章 待て
アルドが大きくガッツポーズをする。
「よっしゃあ!」
「ま、まっ、何言って……!」
カルファは目をにんまりと細め、の肩にぽんと手を置く。
「貧乏からしたらとんでもねえ玉の輿じゃねえか、上手いことやってこいよ」
「ちょっ」
を置き去りにして、トントン拍子に話が進んでいく。
アルドは満面の笑みで、
「決まりだな! さあお嬢さん、俺様と忘れられないアバンチュールを」
「アルドおおぉッ!」
街中に怒声が響き渡る。
状況についていけない、笑顔で送り出そうとするカルファ、激しくしっぽを振るアルド。
全員がぴたりと動きを止め、声の主を見つめた。
「うげっ! ヴィーク!」
アルドの顔色が変わる。
視線の先に立っていたのは、美しい黒豹の男だった。
グレーがかったアルドの毛並みとはまた違った短く艶やかな漆黒の体毛。
アルドと張り合う逞しい体躯。
カッチリとした軍服のような礼服を纏い、緑色の瞳でアルドを睨みつけている。
「アルド貴様……何故この時間に、こんな場所にいる?」
こめかみをピキピキと脈打たせながらゆっくりと距離を詰める。