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首輪をつける

第8章 待て


「わ!」

は見上げるような獣人の大男を見つめる。

筋骨隆々の逞しい身体、太い爪。

全身を覆う黒々としたふさふさの毛。

顔こそフードに深く隠されているものの、服から飛び出したしっぽや立ち耳から彼がイヌ科の特徴を持つ獣人だと分かった。

「ごめんなさい」

ははにかんだ顔で、ぺこっと頭を下げる。

すり抜けるようにして店を後にし、カルファを追いかける。

「もー、待ってくださいよ」

残された男は呆然との後ろ姿を見つめる。

「……かわいい……」

ボソリと呟き、もふもふとしたしっぽをはためかせる。

徐々にその揺れは大きくなり、

「可愛いッ!よし決めたあ!あの子は俺様の嫁だ!」

男は勢いよく飛び上がった。

フードから現れた顔に店員は目を丸くする。

「おーーーーい!」

犬の男は一目散に走り出し、を追いかける。

残された店員は驚いた顔で呟いた。

「今のはアルド王……!?」

そんなことを知る由もないカルファの足取りは軽い。

「次はどこ行こうかなー」

上機嫌に呟く彼をは横目で睨んだ。

「まだ行くんですか……」

「ん? ……じゃあ少し茶でも飲んでいくか?」

カルファの提案に賛成と手を上げる。

「そーだなー、じゃああのケーキ屋にでも」

カルファが楽しげに後ろを振り返ると、

「ん!?」

物凄い勢いでこちらに迫ってくる人影が見える。

しっぽの先を丸め、と顔を見合わせる。

「な、なあ……なんかこっちに来てねえ?」

「……どなたかが走ってこちらの方向に向かってますね、なんでしょうか……わたし達の方に来ているとは限りませんが。他の方に用事かも。或いはもっと先を目指して走っているとか」

「いやぜってー俺らの方に向かってきてるって! ロックオンされてるから!」

落ち着いた様子のに対し、カルファは毛を膨らませて言う。

今すぐにでもの手を引き逃げようとするも、二人の前に大男が回り込む。

壁のように立ち塞がり、二人をギロッと見下ろした。
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