第2章 競り市
町の住人は、物欲しそうに、あるいは恨みがましく、自分たちのテリトリーに侵入してきた余所者を見る。
しかしながら、彼の緑がかった美しい黄金色のつり目は、彼らを一瞥する事も無い。
その危うさすら思える堂々たる佇まいには、彼の有り余る若さと余裕があった。
ただ堂々と前だけを見つめる彼のシルバーの毛並みが風に靡いた。
若々しく艶やかな短い毛先が織り成す美しい縞模様。
少年の要素を充分に残した面立ちは利発そうであり、やや生意気さすら感じ取れる。
小柄な体躯そのままに、足取りも軽い。
彼の隣で、一歩後ろに引いて恭しく後に着く人間の青年。
猫の獣人の彼より歳は幾つか上のようで、また、それ以上に落ち着いた雰囲気がある。
拡張高い執事服にも引けを取らない良い体格をしており、背丈も高い。
憂いのある黒い瞳と健康的な橙色の肌。
深い青色をした短髪が風に煽られ、彼は視線を下げた。
そして二人は迷う素振りも見せず、とある寂れた建物へと足を踏み入れた。