第5章 現実の切れ間で
「そんなことお前はしなくていいって言ってるだろー……」
カルファは慣れた調子でに擦り寄ると、膝の上にぽふんと頭を乗せた。
「そうは行きませんよ」
も馴れた手つきでカルファの小さな額を軽く撫で、その手をゆっくり喉元へとスライドさせる。
顎を擽り、指先で優しく掻くように刺激する。
カルファのとろんとした寝ぼけ眼が更に細まり、手をてしてしと丸めながら気持ちよさそうに声を上げる。
「んぅ……ヴー……」
なんとも言えない声でグルグルと唸るカルファを見ながら、はよしよしと撫で続ける。
「…………グるゥヴ……」
「んー……気持ちいいですか?」
手を動かしながら、優しい口調で問いかける。
そのままカルファの顔を覗き込むと、
「…………」
一転して無表情に変わっていた。
そしておもむろに口を開き、自身の喉を愛撫していた手先を邪魔そうに見据え、噛み付こうとした瞬間
「あっぶない!」
短く叫び、は勢いよく手を突き上げた。
今回は間一髪逃れたものの、はカルファの噛み跡がいくつか残る自分の手先を力なく見つめる。