第19章 背徳
「美しい」
サピルーンは満足気に見下ろし、微笑する。
汗と涙でグズグズになったを抱き上げる。
「私が貴方の目を覚まさせてあげますね? 人間と獣の間に信頼だとか、愛だとか。存在しないってことを教えてあげます」
「……う……」
は濁った目でサピルーンを見つめる。
薬でぼんやりとした頭で、小さく首を横に振る。
「……貴方は優しいから情に絆されているだけです。もし、誰か獣に心が動かされていたとしても。ほんの、一時の気の迷いです」
は小さく唇を開くが、
「ちが……」
「彼らに貴方は相応しくない。そうですね?」
サピルーンはの蚊の鳴くような掠れ声に言葉を重ねて微笑む。
の頭を優しく撫でた。
「人間は人間同士で恋に落ち、その愛に生きるのが自然な生き物でしょう。これは摂理ですよ」
「あ……あ」