第19章 背徳
の顔が引き攣る。
青ざめた顔でサピルーンを見、後ずさる。
「ああ、そんなに怯えて。今まで余程酷いことをされたんですね。無理もありません……獣は自分本位で、貴方の事など何も考えていない」
サピルーンは笑顔のままゆっくりと距離を詰め、の手首を握り締める。
耳元で囁いた。
「私はね、獣人なんて大っ嫌いなんですよ」
の身体中に寒気が走る。
全身の血が冷えるような、自分の足元が揺らぐような感覚。
反射的にサピルーンの手を振り払う。
「おや……どうしましたか、そのような目で私を睨んだりして……」
「帰って……帰ってください……」
サピルーンは一瞬真顔になるも、すぐに笑って小首を傾げた。
「大丈夫ですよ、私は他の獣とは違います。全て私に任せてください」