第19章 背徳
トロとの交合から時は流れ、膣口に栓をしていた精液が零れ落ちれば、また客を迎え入れる夜が来る。
がドアを開くと、そこには懐かしい顔が立っていた。
「サピルーン、さん……」
サピルーンの顔に、様々な思いが溢れる。
屋敷で働いていた事が遥か昔のように思え、俯いた。
「……どうしたんですか? なんでここに……」
「私は、今日は客です」
サピルーンの言葉に吊られるように顔を上げると、
「貴方を、買いました……貴方は今は私だけの物だ」
に震え声で告げた。
目を見開き、
「……貴方を!どれほど私が愛おしく思っていたかっ!」
その場に立ち竦むの肩を掴む。
「獣共に触らせるなんて、よりによって獣人共の娼婦になるなんて、貴方が、私の愛おしい貴方が……」
肩に指がめり込み、は表情を歪める。
「い……っ」
「ああ……申し訳ありません、つい興奮して……」
サピルーンがそっと手を離し、を見つめる。
「それにしても……あんなに可愛がっていたのに、本当に娼館で働かせるなんて。獣とはやはり理解が出来ませんね、理解したくもありませんが」
苦々しい口調で吐き捨てたサピルーンは、いつもの微笑とかけ離れた歪んだ笑みを浮かべている。